フミヤ先輩の教えである「コンパ・フォワード」の実行により、合コンにスタメン起用されるようになったアキラ。
しかし、それだけで女の子とエッチしまくれるようになるなら苦労はない。
合コンに毎週出撃している男なんて腐るほどいるのだ。
ここからはゴールを決められるようになるかどうか本当の戦いが待っている…
ここから本編
私の女性との関係性において大きな影響を与えた銀行員ユリとの出会いはハロウィンパーティー。
8年前はまだ渋谷のハロウィンが狂乱の宴と化す前で、私が関わっていた小売業者ですらハロウィンの経済効果について懐疑的だった頃である。
わずか数年で凄まじい熱狂のイベントと化したハロウィンだが、この頃はまだ菓子のカボチャ味の企画品が多少売られる程度で、若者がこぞってコスプレをする世の中では無かったのだ。
ハロウィンパーティーを主催していたのは、私やフミヤ先輩よりも更に7コくらい年上のとある先輩。
1970年代後半生まれの、しかしハイスペックなチャラ男兄さんである。
仕事もできるがナンパもできる方。
このパーティーは持ち前の男女両方の人脈を活かして、知り合いを呼びダイニングバーを借り切って出会いの場とするものだった。
申し訳程度の仮装で参加する女子から、ガチ目のメイクを施して参加する者まで様々。
個人でやっているものだから規模は渋谷とは比べよう者では無いが、男女合わせて50人くらいが集まって、ビンゴ大会なども用意された結婚式の二次会的な場。
この先輩は後輩の面倒見も良く、私のような新入社員世代も
「お前ら名古屋に縁も所縁も無いんやろ?ここで色々作っとき!」
と呼んで頂けたわけである。
私は同期4人で申し訳程度の仮装をドンキで買い集め会場を訪れた。
そこで出会ったのが今回スポットの当たるメガバンク一般職のユリを含む女子4人のグループ。
彼女らは私達の1つ年上だが、グループ同士の相性というものがあり仲良くなる事ができた。
彼女らは一般職女子。つまりは典型的OL4人組。
対して私達は上場企業の営業マン4人組。
ジグソーパズルの凸凹が8人合わせてピッタリと嵌るような組み合わせだ。
本命の彼氏彼女を見つけるのに超適当な集団同士である。しかも彼女らは4人が4人とも平均的な可愛さを持っているし、男4人も平均的なさわやかさを持っている。
2時間ドラマとかに出てくる陳腐な役どころ。
女子大生はみんな同じメイク、同じ髪色、同じ服装で「量産型」とか揶揄されるが、それの社会人版。
量産型OLと量産型営業マン4:4の組み合わせは、量産型のグループ交際を産んだ。
名古屋という新天地での新展開に飢えていた我々は、同期4人で示し合わせて彼女らに飲み会しようと誘った。
彼女らはメンツを替えてくることなく4人で現れたし、その後もボウリングにカラオケとこの4:4で3度も遊んだのである。
ナンパやコンパのジョブレベルを上げた今振り返ってみると正気の沙汰ではない。
いや、どっちかっていうと一般的な価値観ではこれは
清く正しい男女の交際の姿
なわけだが、このまま行くと1組か2組くらい結婚してしまいそうな勢いである。
同じグループで3度もセックスなしで遊びに行くなど狂気の沙汰としか思えなくなっている私は既に道を踏み外しているわけだが…
そして決戦の舞台を我々は整えた。
それは私の部屋でのタコパである。
男子4名は事前のミーティングおよび買い出しを行い、準備を整えた。
しかもタコパの前に2時間みっちりカラオケしてから部屋に入れるというさわやかぶり。
ただ、このグループ内ではこうした催しに、社会人になってからはなかなか出会うことのできない学生サークル感というものがあって、女子達もそういうものを楽しみに来ていたのかもしれない。
カラオケは靴を脱いで上がれるフラットシートの大部屋を押さえ、冷蔵庫にはドリンクが満タン。カーマホームセンターで営業の途中に買ってきたタコ焼きプレート。
準備は万端だった。
夕方5時に待ち合わせて2時間のカラオケ。
お酒はセーブしながら、何の根拠も無い手応えを感じながら。
部屋まで移動してきてお腹の空いたところでタコ焼き開始。
順調に飲み進め、黒ひげやジェンガで酒量を加速させる。
あからさまな大学生のようなやり口。
それでも女の子達はノッてきた。
全員メガバンの一般職、可愛くないわけがない。
世の中、容姿で人が判断されないなんて幻想だ。社会的評価の高い会社は美男美女揃いが常識。(男はそこまででもないけど)
そんな子らとの宴が楽しくないわけがない。
して、時刻は23時。
何度かいっしょに遊んでいた間に、我々は女の子達の終電の時間も把握していた。
(キモい奴らです)
我々は意図的に部屋の中から時計を外しており、テレビも絶対に点けないと示し合わせていた。
今思うとこんなやり方、完全にAFC丸出しで吐き気がする。
欲求不満が滲み出た、女の子との正々堂々の勝負を避けて、アンフェアなやり方で罠にかけるようなやり方だ。
今だから言えるが、こういうやり方で女の子を口説こうとするのは大間違いだ。
本気で狙っている女の子に対してなら尚更、こんなスタートは切らない方が良い。
「終電なんて気にしないで朝まで遊ぼうよ」
一見したらギラギラ感丸出しのセリフかもしれないが、こうやって正々堂々突破する方が絶対に女の子の印象は良いはず。
女の子だってそのくらいわかる。前後不覚になるまでお酒を飲ませるなんて犯罪だし、そうでないなら「終電間に合わないよう時間稼ぎされた」ことくらいわかる。
そうなった時生まれる感情は退社寸前に嫌いな上司の小言に捕まった時と同じものだ。
帰りたい人には帰りたいなりの理由がある。
帰りたいのに帰れないなんて地獄でしかない。
我々の作戦は見事に成功した。
彼女らの終電の時刻をちょうど過ぎたあたりで白々しく
「そういえば電車大丈夫?」
こちらから聞く事で、その責任すら転嫁する。
女の子達は「やば!走れば間に合うかな!?」と言って大急ぎで身支度を始める。
我々はもちろんそれが無駄な努力であると知っている。
「間に合わないんじゃない?」と声をかけられながらも、部屋を出る彼女達。
それでも駅まで一回は走ったのだ。
この時点で脈の無いフラグはビンビンに立っていたが、我々はひとまずの作戦の成功を喜んですらいた。
駅について、女子達が「あぁ、だめだもう電車ない…」と悲嘆にくれているところに、「タクシーは勿体無いからとりあえず部屋に戻ろうよ。気づかなくてごめんね」と声をかける男たち。
本気で拒否されていたらタクシーで帰っただろうが、女の子達は宿泊覚悟で部屋まで帰ってきた。
「どうしよっか」
4:4のグループではあったが、ひとまず大勢で騒ぐのは深夜だと近所迷惑になるから、として2:2に分かれることにした。
男子の部屋は3階に2人、1階に2人住んでいたので、フロアで分かれ、女子を2人に分断する。
規模が小さくなったところで少し飲み進めるが、夕方から遊びっぱなしなので眠気に襲われる4人。
「私床で寝るからみんなで一緒にここで寝ようよ!」
ユリが提案した。
もう一人の女子が「いいね!そうしよ!」と同意する。
まずい流れだ。
男女同数では、場の過半数が獲得できない。
同期の男がゴネると、「私達は気にしないから2人とも自分のベッドでゆっくり寝ていいよ!準備も色々してくれたし疲れてるでしょ?」とユリ。
ユリよ…

君の気遣いは社会人としては100点だ。
しかし
今の私達にとっては0点だ…
ただ、この頃の私は念能力もまだ教わっていないペーペー。

自分の身に何が起きているかもわからない。
同期の男も
「じゃあ俺もここで寝るわ!」
と展開に無理のある言い訳で食い下がることしかできない。
私は部屋にいつもは二枚重ねで敷いていた
ふとん
を敷いて横に並べた。
(この頃私はベッドを買わず布団生活だった)
そこに男女四人が川の字で寝る。
嬲るという字は男二人に女が挟まっているが
女嬲 みたいな感じである。
(何なんだこれは…)
女子「修学旅行みたいだねー(^^)」
いやいや
修学旅行は修学旅行でも

こういうやつだったら良いよ。
でもな、違うんだって。
俺らはおセックスがしたいんだ。
状況を打開できない私。
電気も消し、暫く駄弁っていたところで携帯にメールがくる。
二つ隣で寝ている同期からだった。
「どうする?」
私はなす術が思いつかなかった。
「すまん、想像していた展開にできなくて」
それは敗北宣言だった。
私はこの時もう既に敗北を心の中で認めてしまっていたのだ。

そこに届いたメール。
「俺、なんとかして1人連れてくわ」
えっ
そして彼は立ち上がった。
立ち上がってこう言った。
「やっぱり狭いし寝づらいから俺部屋で寝るよ。だからどっちか一緒に行こうぜ」
正直論理的な整合性などない。
頭でばかり考えていたこの頃は、そんな感想が浮かんだが、でもメチャクチャ頼もしく見えた。
そして女の子も雰囲気を感じ取っているのか、この提案を無碍にせず
「どうする?」と食い下がらずに受け入れてどちらが部屋を出て行くか相談し始めた。
決着がつかない議論を見て同期の男が続けた。
「じゃあマキちゃんおいでよ」
呼ばれたマキは「わたし?」と若干戸惑いながらも立ち上がった。
2人は出て行った。
薄暗い中でだが、グッと親指を立てて出て行く背中が見えた。私は心の底で感謝を告げた。
部屋に残されたのは私とユリ。
紹介がめっきり遅くなったが、ユリは吉高由里子似のちゃんと可愛い、所作に知性もあるし真面目一辺倒ではない、非の打ち所がない女性だった。
特筆するほど優れている点はないが、全てが平均点以上の女。
当時彼女が居なかった自分にとっては記念すべき名古屋での初彼女にしても良いとさえ思っていた。(というか妄想していた)
しかしこうしたシチュエーションにも免疫のない私はどうやって距離を詰めたら良いのかわからない。
手を伸ばせばどこにでも手が届く。
この感覚はあれだ。
30代ホイホイですね。
もう少し20代読者にも配慮しましょうか。
このくらい溢れる童貞臭。
そんなこんなで、寝返りを打つふりをして反対側を向いて寝ているユリに恐る恐る体を近づける。
良い匂いがしてくる。
気持ち悪すぎて描写不可能なくらいだが仕方がない。
実際キモかったのだ。
私はそーっと彼女の体に覆いかぶさるように腕を回してユリの身体を抱きしめた。
明らかに起きている反応で、ユリの体がこわばる。
そして、今だったらこのシチュエーション、100%やれただろう。
読者の方も、全員が「やれるやろ」と思っているはず。
やれたかも委員会だって満場一致でやれたと判定するはず。
だがここで経験値のない私は愚行を取る。
言葉を発したのだ。
それも
「ダメだ、ドキドキしてきた」
と。
き
きんもーーーーっ☆
ここでの正解は何も言わずに有無を言わさずチューして乳揉む、が満点回答。
そんな中私はここにきてまだ予防線を貼ろうとしていた。
要は「エッチして良いよ」と言われるまで手を出さない、というのと同じである。
女の子に全責任を丸投げ。
こういう態度が紳士だと勘違いしている時期。
ユリから返ってきた言葉は
「えぇ…ダメだよそれは」
彼女はこちらに向き直って少し距離をとった。
「え、ドキドキしてこない?」
追う言葉もキモい。
ユリは口を開いた。
「私たちは…そういうのじゃないじゃん?」
ド正論ですね
返す言葉を失う私。
ユリ「ごめんね、でも泊まったら普通いいじゃんって思うよね…」
私「いや、それは…そういうわけでは…」
ユリ「いいのいいの!ちゃんと終電で帰るべきだったのにね」
お察し頂けると思いますが
向こうの方が5000倍は大人です
サカった男子を優しく嗜める年上の女性。
22歳と23歳で天と地ほどの経験値の開き。
ユリはたぶん、沢山の恋愛をきちんと経験して大人になってきた女。
私は歪んだ性欲だけで来てしまった子供のままの男。
返す言葉が有ろう筈もなかった。
ユリ「それにさ、そういうことしちゃったらもう皆で遊べなくなるじゃん」
私「そう?」
ユリ「私は無理だな…嫌だよ。それにね、楽しかったんだよ。こんな風に大勢でカラオケ行ったりボウリングしたり、サークルみたいな付き合いって社会人になったらもうできないって思ってたし」
私「楽しいよね」
ユリ「うん。男の子も4人とも素敵な子達だから、って女子みんなで話してたんだよ?」
私「俺もユリちゃんのこと素敵だと思ってるよ」
ようやく絞り出した褒め文句。
しかし通用しない。
ユリ「嘘でしょ、たまたま一緒に寝ることになったから言ってるだけじゃんw」
私「嘘じゃないって!そう思ってたからこの組み合わせになるようにしてもらったんだし」
嘘の上塗りは、ついに仲間の善意をも売る。
ユリ「えー…それが本当だったら気持ちは嬉しいけど…」
…
サイテーの告白めいた感じになってしまった…
気まずい沈黙が流れた後、ユリは口を開いた
ユリ「そうやって言ってくれるんなら、謝らなきゃいけないことがあるかな」
私は何?と聞いた。嫌な予感がしながら。
ユリ「私たち、4人とも彼氏いるの」
よ
よ
よ
4人ともーーーーー!!???
(この時はショックでしたが、こんなんざらにあると後々学びました)
ただ1人くらいは彼氏おるやろ、と仲間内で話してたのが、まさか全員とはね…
ユリ「だからごめんなさい、アキラ君とそういう感じにはなれない」
そこで私はラストチャンスを自ら潰す。
私「そっか…じゃあ今日のことは無かった事にしてまたみんなで遊ぼうよ」
青かった。
この時の私に言ってやりたい。
「また」など無いのだ。
後に残るのは
襲いかかろうとした事実だけ。
ユリは言った。
「本当に?ありがとう。優しいんだね、アキラ君は」
正直に言おう。
この瞬間私は
紳士であれた自分を誇らしいとさえ思っていた。
ただの意気地なしの癖に。
優しいね、とは
褒め言葉ではなく、
別れの言葉
である事を知らなかったのだ。
彼女達と翌日以降、二度と遊びに行ける事はなかった。
それまで私は気づかないほどに愚かだったのだ。
そのまま悶々としながら朝を迎えるまで、私は彼女の寝息を聞きながら布団の中でチンコをいじくり回す事しかできなかった。
翌日には今度1:1でデートに誘ってみようなどと考えながらシコったりしていた。
(ハイパーキモい奴です)
だが、彼女達のグループとの連絡が途絶えた時、私は漸く大敗北を喫したことを悟った。
以上が私のコンパ人生における最大の大敗北
2010年 覚王山の乱である。
(当時住んでいた街に因む)
次回、レベル30に到達し、一つ星女子ハンターの称号を得た(と自称する)今の私から見てのこの事件の考察と、当時私がどのように奮起したかをお届けします。
つづく。
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